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歌が遅れて聞こえる…その正体「レイテンシ」とバッファサイズの話

歌が遅れて聞こえる…その正体「レイテンシ」とバッファサイズの話

録音しようとマイクに向かって歌うと、ヘッドホンから返ってくる自分の声がワンテンポ遅れて聞こえる
気持ち悪くてまともに歌えない——録音に踏み出した初心者が最初にぶつかる壁です。

この遅れの正体がレイテンシ
そしてそれを調整するツマミがバッファサイズです。

レイテンシとは

レイテンシ(latency)は「遅延」のこと。
マイクに入った音は、①デジタルに変換され、②パソコンで処理され、③再びアナログに戻ってヘッドホンに届きます。
この工程には必ず時間がかかり、それが遅れとして耳に届きます。

数ミリ秒なら人間は気づきませんが、数十ミリ秒を超えると「あれ、遅れてる」とはっきり分かり、演奏や歌に支障が出ます。

マイクからAD変換・パソコン処理・DA変換を経てヘッドホンに届くまでの経路図。この道のり全体の時間がレイテンシ

バッファサイズ: バケツリレーのバケツの大きさ

パソコンは音の処理を1サンプルずつではなく、ある程度まとめて(バッファに溜めて)処理します。
このまとまりの大きさがバッファサイズで、「128サンプル」「512サンプル」のように指定します。

バケツリレーを想像してください。

  • 小さいバケツ(小バッファ) — 水はすぐ届く(低遅延)が、何度も往復するので忙しい(CPU負荷が高く、処理が追いつかないと「プチプチ」というノイズが出る)
  • 大きいバケツ(大バッファ) — 往復は少なく余裕がある(動作が安定)が、水が届くまで待たされる(遅延が大きい)

つまりレイテンシと安定性はトレードオフ
どちらかを取ればどちらかを失います。
万能の正解値は存在しません。

バッファサイズのトレードオフ図。小さいと低遅延だがノイズが出やすく、大きいと安定するが遅延が大きい。録音は小さくミックスは大きく

セオリー: 録音は小さく、ミックスは大きく

ではどうするか。
作業内容で使い分けるのが定石です。

  • 録音するとき — 遅れが致命的なので小さめ(64〜128サンプル)。プラグインを減らして負荷を下げておく
  • ミックスするとき — 遅れてもリアルタイム性は不要なので大きめ(512〜1024サンプル)。重いプラグインを安心して挿せる

Studio One 6では、設定は「オプション→オーディオ設定」にあります。

なお、この設定を実用的な小ささまで詰めるにはASIOドライバで動くオーディオインターフェースがほぼ前提になります。
Windows標準の音声経路では遅延が大きくなりがちで、ここは「オーディオインターフェースはなぜ必要か」という話に直結します(ASIOとWASAPIの違いは別記事で掘ります)。

おまけ: 遅延は計算できる

実はレイテンシは体感だけの話ではなく、簡単な割り算で見積もれます。
バッファサイズ ÷ サンプリングレート = 遅延時間
たとえば256サンプル ÷ 48,000Hz ≈ 0.0053秒、つまり約5.3ミリ秒です。

バッファサイズ片道の遅延(48kHz時)
64約1.3ms
128約2.7ms
256約5.3ms
512約10.7ms
1024約21.3ms

実際の体感は、入力と出力の両方でバッファを通る分と機材の変換時間が乗るので、この表の2倍強が目安。
往復10ミリ秒台前半までなら快適に歌え、20ミリ秒を超えるとはっきり「遅れてる」と感じる人が多い、という関係です。
自分の設定が今何ミリ秒なのか、一度計算してみると数字と体感が結びついて設定を決めやすくなりますよ。

裏技: ダイレクトモニタリング

実は録音時の遅れには、根本的な回避策があります。
多くのオーディオインターフェースに付いているダイレクトモニタリング機能です。
マイクの音をパソコンに入れる前にヘッドホンへ直接返してしまうので、遅延は理論上ゼロ。
歌ってみたの録音なら、バッファと格闘するよりこちらのほうが手っ取り早いことも多いです(その場合、DAW側のモニタリングはオフにして二重に聞こえないようにします)。

まとめ

  • 歌の遅れの正体はレイテンシ。調整ツマミがバッファサイズ
  • 小バッファ=低遅延だが不安定、大バッファ=安定だが遅い。録音は小さく、ミックスは大きく
  • 録音の遅れ対策は、インターフェースのダイレクトモニタリングが最強の近道

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