前回のゲインとボリュームの記事の続きです。
フェーダーに刻まれている「0」という数字、あれは何の0なのか。
そして音量調整の正しい順番の話をします。
2つの「0」は別物

DAWの中には0という数字が2箇所に出てきます。
- フェーダーの0 — 「増やしも減らしもしない」基準点。ここが素の音量
- メーターの0dB — 「これ以上は潰れる」という限界点(dBの記事で書いた天井)
同じ0でも、意味は正反対に近い。
フェーダーの0は中立、メーターの0は限界です。
「フェーダーを0にしたのにメーターが赤い」は矛盾ではなく、元の録り音が大きすぎることを意味します。
各段階で余裕を保つ = ゲインステージング

音はマイクから入って、チャンネルを通り、バスにまとまり、マスターから出ていきます。
このどの段階でも天井に触れないように保つという考え方が、ゲインステージングです。
難しそうな名前ですが、やることは単純。
- 録音時 — ゲインでピークが-12dB前後になるように
- チャンネル — フェーダーはなるべく0付近のままバランスを取る
- バス — まとめても天井に触れていないか確認
- マスター — -6dB前後の余裕を残して書き出す
なぜ余裕が要るのか。
エフェクトは音量を増やすことがあるからです。
コンプで持ち上げ、EQで一部を上げ、リバーブで成分が足される。
入口でギリギリだと、処理を重ねるたびに天井を突き破ります。
上げるのではなく、下げる

初心者がいちばんハマるのがここです。
「ボーカルが聞こえない」→ボーカルを上げる→「今度はギターが埋もれた」→ギターを上げる…
この連鎖を繰り返すと、全員が最大付近に張り付いてマスターが真っ赤になります。\あるある〜/
正解は逆で、邪魔しているパートを下げる。
ボーカルを目立たせたいなら、ボーカルを上げるのではなく周りを下げる。
比率が同じなら聞こえ方は同じで、しかも天井に余裕が残ります。
全体が小さくなりすぎたら、最後にマスター手前でまとめて持ち上げればいいだけ。
「上げる」を我慢して「下げる」で調整する——これだけでミックスの安定感が変わります。
初心者がやりがちなミス
- マスターのフェーダーで全体を下げて解決したつもりになる — 各チャンネルが歪んでいる状態は直らない。上流から直す
- プラグインの入出力レベルを見ていない — プラグインの中で天井を超えていることがある。挿したら入出力メーターを確認
- 「メーターが緑だから大丈夫」と思う — 一瞬の赤(ピーク)を見逃しやすい。ピークホールド表示をオンにすると安全
まとめ
- フェーダーの0は基準点、メーターの0dBは限界点。別物
- ゲインステージング = どの段階でも天井に余裕を残す考え方
- 音量調整は「上げる」より「下げる」。天井の余裕が守られる