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「プロも使う技」が自分の曲で再現しない理由 — Tipsの数値は答えではない

「プロも使う技」が自分の曲で再現しない理由 — Tipsの数値は答えではない

「プロも使っている技です。リバーブのプリディレイを0.2に設定しましょう」。
この手のTips、試してみたらなぜか自分の曲では大して良くならなかった経験、ありませんか。\ある〜/
あなたの耳が悪いのでも、プロが嘘をついているのでもありません。
今日はTips記事が構造的に抱えている欠陥の話です。

数値は「答え」ではなく「判断の結果」

Tipsの数値はテンポ・声質・アレンジから耳で判断した結果であり、数値だけをコピーしても自分の曲では再現しないことを示す図

プロがその数値にたどり着くまでには、必ず判断の工程があります。
曲のテンポ(残響の返りを拍に合わせるか)、声質(子音の立ち上がりの速さ)、アレンジの密度(隙間があるほど響きが聞こえる)——これらを耳で聴いて、その曲のための答えとして数値が決まる。
Tips記事が配っているのは、この工程の最後に出てきた数値だけです。
レシピで言えば、「塩少々」の「少々」が具体的に3.2gだった日の記録を、鍋の大きさも具材も違うあなたの台所に持ち込んでいるようなもの。

プロの台所で判断の結果として出た数値だけを、鍋も具材も違う自分の台所に持ち込んでも同じ味にならないことを示す図

数値がアテにならない証拠

同じ「プロの技」でも、記事によって0.2ms、0.2秒、20msと単位すらバラバラに流通していることがあります。
理屈が理解されないまま数字だけがコピーされて回覧されている、何よりの証拠です。
単位が3桁違えば効果はまったくの別物なのに、どれも「プロも使う技」として紹介されている。

じゃあどうすればいいのか

  • 数値ではなく「目的」を持ち帰る — その設定は何を解決しようとしているのか(なじませたい? 輪郭を残したい?)を先に理解する
  • 数値は初期値として使い、耳で動かす — 紹介された値から上下に振ってみて、自分の曲での変化を聴く。動かして初めて意味が分かる
  • 「なぜ」が書いてない記事は初期値集だと思う — 悪い記事ではないが、答えでもない。そういう距離感で付き合う

当ブログではこれから、こうした定番テクニックを「なぜやるのか」から解説するシリーズを始めます。
数値を配るのではなく、自分の曲で答えを出せる判断の道具を配る。
たとえばマイクとの距離の話もその一つで、「何cmが正解」ではなく「距離がEQとして働く理屈」が分かれば、正解は自分で決められるわけです。

Tipsの正しい使い方3ステップ。目的を読む、初期値として置く、耳で動かす

まとめ

  • Tipsの数値は、その曲・その声での「判断の結果」。答えではない
  • 持ち帰るべきは数値の手前にある「目的」と「判断基準」
  • 数値は初期値。そこから耳で動かした先に、自分の曲の答えがある