全部のパートを丁寧に録って、丁寧に並べたのに、再生するとなんだかモヤッとした塊になっている。
いわゆる「音が団子になる」状態です。
そして多くの人がここで、聞こえないパートの音量を上げます。
すると今度は別のパートが埋もれる。また上げる。
…この無限ループ、原因は音量ではありません。
原因は「帯域の取り合い」

犯人はマスキングという現象です。
同じ周波数帯域に複数の音が重なると、大きい方が小さい方を覆い隠して聞こえなくしてしまう。
たとえばボーカル・ギター・キーボードは、どれも中音域に本体があります(音の成分の記事でいう「芯」の帯域)。
3者が同じ席を取り合っている状態なので、全員が譲らなければ全員が聞こえにくくなる。
音量の問題ではなく場所の問題なんです。
解決策は「削る」

主役を目立たせたいとき、やるべきは主役の居場所を空けることです。
- 脇役の重なる帯域をEQで削る — ギターのボーカルとぶつかる帯域を少し下げる
- 脇役の音量を下げる — そもそも全員が主張しなくていい
- 左右に振って場所を分ける — パンで横方向に逃がすのも有効な手
席が空けば、主役は音量を1dBも上げずに前に出てきます。
これが「ミックスは足し算ではなく引き算」と言われる理由です。
コツとしては、削るのは脇役の側だということ。
主役のボーカルをEQでいじりたくなりますが、周りが譲れば主役はそのままで抜けます。
上げ続けるとどうなるか

逆に「聞こえない→上げる」を繰り返すと何が起きるか。
全員が大きくなるので相対的な関係は変わらず、マスターだけが真っ赤になります。
ゲインステージングの記事で書いた、あの状態ですね。
しかも全員が主張している音は、聴いていて疲れます。
プロのミックスが「スッキリしているのに迫力がある」のは、各パートの居場所がきれいに分かれているから。
音数が多いのに団子にならないのは、譲り合いが設計されているからです =三。・o・)ノ
初心者がやりがちなミス
- 聞こえないパートを上げ続ける — 最大の罠。上げるのではなく周りを削る
- 主役のEQばかりいじる — 削るべきは脇役側。ボーカルは素のままが一番強いことも多い
- 低域を全パートで残す — 使わない低域はハイパスで切るだけで、土台の団子はかなり解消する
まとめ
- 音が団子になる原因は音量ではなく、同じ帯域の取り合い(マスキング)
- 解決策は主役の居場所を空けること。削る・下げる・左右に振る
- 「聞こえない→上げる」の無限ループから抜け出すのが第一歩