Technology and music life
 
耳は慣れる、そして疲れる — ミックスが翌日に別物に聞こえる理由

耳は慣れる、そして疲れる — ミックスが翌日に別物に聞こえる理由

3時間かけて納得いくまで仕上げたミックス。
翌日聴いたら低音まみれでシャリシャリだった。

この現象、技術の問題ではありません。耳の問題です。
そして誰にでも起こります。

耳は慣れ、そして疲れる

作業時間が延びるほど判断の精度が落ちていくことを示すグラフの図

同じ音を聴き続けると、脳はその状態を基準として扱い始めます。
リファレンス曲の記事でも書いた、あの現象です。

さらに厄介なのが耳疲れ。
長時間大きな音を聴くと、高い音から順に感度が落ちていきます。
すると「高音が足りない」と感じて足す。実際には足りているのに。
翌日、回復した耳で聴くとシャリシャリ——この流れです。

つまり作業時間が延びるほど、判断の精度は下がる。
粘れば粘るほど良くなるわけではないんです。

もう1つの罠: 音量の錯覚

小さい音量では地味に、大きい音量では良い音に聞こえるという音量の錯覚を示す図

人間の耳は、音量によって帯域の聞こえ方が変わります。
小さい音量では低音と高音が聞こえにくく、大きくすると両方がよく聞こえるようになる。

だから音量を上げると、中身が同じでも「良い音になった」と錯覚します。
この錯覚は非常に強力で、プロでも対策なしには騙されます。

対策は2つ。比較するときは音量を揃えること、そして作業中は音量を変えないこと。
作業のたびに音量が違うと、昨日と今日で判断の基準がずれてしまいます。

耳のコンディションを守る

小さめの音量で作業する・こまめに休む・音量を変えない・翌日判断するという耳のケア4項目の図

具体的にやれることは、地味ですが効きます。

  • 小さめの音量で作業する — 耳が疲れにくく、実はバランスの粗も見つけやすい
  • 30〜45分ごとに耳を休める — 無音の休憩を数分取るだけで感覚が戻る
  • 同じ音量で聴き続ける — 音量を変えると帯域バランスの印象まで変わる
  • 迷ったら寝る — 翌日の自分に判断させるのが、最強かつ無料の耳リセット

特に最後が強力です。
「これでいいのか分からなくなった」は、ほぼ耳が限界のサイン。
そこで粘って出した答えは、だいたい翌日に否定されますw
技術より先に、耳のコンディションを疑う習慣をつけてください =三。・o・)ノ

初心者がやりがちなミス

  • 納得いくまで一気にやり切る — 後半の判断ほど精度が落ちている。分割した方が良い結果になる
  • 盛り上がってきたら音量を上げる — その瞬間から判断基準が変わっている
  • 疲れた耳で「まだ足りない」と足す — 足りないのは音ではなく休憩

まとめ

  • 耳は慣れて疲れる。作業時間が延びるほど判断の精度は落ちる
  • 音量を上げると良い音に錯覚する。比較時は音量を揃え、作業中は変えない
  • 小さめの音量・こまめな休憩・そして迷ったら翌日に判断させる